※この記事は、森野御土日古のライブ配信やインタビューをもとに、ライターが文章を作成しています。
ティール組織解説4回目は「進化する目的」です。
ティール組織が生み出した、3つのブレイクスルーのうちの1つが「存在目的(進化する目的)」でしたね。
そして、ティール組織では、存在目的は進化していきます。
「目的が進化するってどういうこと?」
「一度決めた組織の目的を変えちゃってもいいの?」
目的が進化するイメージがつかめるように、解説していきます。
ティール組織について、ちょっとずつ理解を深めていきましょう。
進化する目的とは
ティール組織では、組織全体がひとつの生命体のように、目的を感じとり、感覚を共鳴し合いながら目的を進化させていきます。
ティール組織が生んだブレイクスルーは
「セルフマネジメント」
「ホールネス」
「存在目的」 でしたね。
その中でも「存在目的(進化する目的)」についての理解が、最もイメージをつかみにくいかもしれません。
そこで、2つの組織を例に「目的が進化するとはどういうことなのか」より感覚に落とし込んでいきましょう。
看護師さんたちの組織| 目的が進化するイメージをつかむ①
存在目的が進化するイメージを膨らませるために、ティール組織の事例を参考にしたストーリーを共有します。
(事実をもとにしたフィクションと思って読んでください。)
あるところに、訪問看護を専門とする小さな組織が生まれました。
リーダーはティール意識で、無意識にティール組織を目指していました。
だから、その組織は、存在目的をもつティール組織として、小さく誕生しました。
この組織が目指すのは、効率を重視し、患者さんに対して機械的に処置を施すことではなく、人間性を大切にした看護や介護をしようというものでした。
その目的に向かっていろんな工夫をすることで、目的を大切にしながらも利益を生み出す方法が見つかり、そして、利益が上がるので、一人ひとりにきちんと向き合える。
そうした経営のノウハウを見つけることができました。
このとき「人間性を大切にした看護」という組織の目的を追求することで、それがひとつクリアされています。
看護師さんたちは、新たに話し合いを始めます。
「最初の目的が満たされた今、自分たちの組織はどんなの目的をめざせばいいのだろう?」
そして、話し合いの中で「なんだかいいものが見つかったね」と感じる発見がありました。
「私たちが見つけたこの看護ビジネスのノウハウをみんなに伝えたいし、広げたい。
多くの看護師さんや介護士さんたちは、このノウハウを求めてるんじゃないか」
という思いが湧き出てきたのです。
行動する中で新しい発見がある| 目的が進化するイメージをつかむ①
一人ひとりが組織の目的を追求する中で、組織の目的は変化し、新しいステップへと進化していきます。
この看護師さんの組織では「人間性を大切にした看護」から「経営ノウハウを広げる方法を探そう」に目的がひとつ進化していますね。
そして、さらに話し合いを深めます。
「これは、私たちがコンサルタントとして他の病院にノウハウを伝えても、たぶん伝えた病院は変わらないよね。
この方法は、一緒にこの仕事をやる中でしか広げられないと思う。」
「じゃあもう、どんどん人を受け入れて、私たちみたいな組織を大きくしていくことで、この方法を広げていこうか」
ということになりました。
そうしたら「じゃあ次は、いろんな人を受け入れられる仕組みをつくろう」みたいになった。
ここでも、組織の目的がひとつ進化していますね。
看護師さんたちの組織は、大きな目的として「人間性を大切にした看護や介護をしよう」という目的をもっていました。
そして、その目的に向かっていろんなことを追求していく中で
「でも、自分たちの目の前の患者だけ救っていてもしょうがないよね」
という感覚があることにも気づきはじめました。
大きな目的を追求する中で
「人を受け入れられる仕組みをつくろう」という目的が生まれたのです。
大きな目的の中で小さな目的が進化し、小さな目的が進化する中で大きな目的も進化していきます。
ティール組織は、シナプスのように立体的に、相互に繋がりをもちながら存在しています。
目的をもって行動してみる中で発見があり、そして、新しい存在目的が生まれることもあるのでしょう。
ある一般的な会社組織| 目的が進化するイメージをつかむ②
ティール組織、2つ目は、ある一般的な会社を例にお話しします。
(こちらも、実話を参考にしたフィクションとして受け取ってください。)
その会社が、ある新しいサービスを生み出しました。
そして
「社会を良くしよう。
そのために新しいサービスをもっと広げよう。
売り上げ目標は〇億円だ!」
という目標を立てて勢いよく動き始めました。
だけど
「あれ、このまま進んでしまうと、社員を大切にできなくなってしまうかもしれない。」
「会社にとって、サービスだけじゃなく社員も大切にという目的をもっていたのに。」
「ぼくらはなんか、大切なものを失ってしまうんじゃないか。」
という話しになりました。
すると
「じゃあ大切なのは、社員一人ひとりを大切にしながら、
サービスを広げる方法を見つけることなんじゃないかな。」
という新しい目的が見えてきて。
「でも、いまの会社の、一人ひとりの力じゃ、今の目標は無理しちゃうよね。」
「じゃあもうこの目標なんていいんじゃないかな。」
「そうだね。もういいよね。」
「だって、ぼくらが大切なのは目的だから。」
必要なら立ち止まる| 目的が進化するイメージをつかむ②
「社員一人ひとりを大切にしながら、サービスを広げる方法を見つけること」
目的のために、いまの組織にとって必要だと感じれば、
一旦ストップさせて人が成長できる時間をとる。
そして、目的に向かい、再度トライします。
一人ひとりの成長を大切にしていきながら
そして、人を大切にすることで、組織が進化し大きくなっていけるような。
ティール組織では、そのような形を生み出しています。
そして、十分な準備が整ったら、また目的が進化して、
手放した目的に戻ることもある。
たとえば、こういう感じです。
「でもやっぱり、このサービスは世の中に広がったほうがいいと思うから、
そういう形を生み出して、もう一度チャレンジしようよ!」
このような、プロセスを感じとりながら、その都度、その状況に合った最高の目的が見えてくるのが、進化する目的なんじゃないかな、と思っています。
進化する目的は新しい可能性を広げる
組織という生命体は、いま何をしようとしているのか。
どちらに向かおうとしてるのか。
その組織にいる一人ひとりが、組織という生命体の一部として
有機体として組織を捉え、その向かおうとする方向を感じ取りながら、活躍します。
もちろん、あなたには自らの考え方もあるし、価値観もあるでしょう。
それでも、生命全体が行こうとしている方向と、あなたの魂を共鳴させることはできます。
共鳴できる部分があれば、その一部でありながら、魂を輝かせて活動し、
そして、有機体全体にメリットを生み出していくことはできますよね。
有機体としての組織の中で感じてることを大切にしながら、あなたはそこで活躍できるのです。
そして、一人ひとりの
「本当はこれをしたいんだ」とか
「本当はこうしたかった」
という深いところから湧き上がる想いがもしかしたら、目的を進化させることさえ、あるんじゃないかなと思います。
みんなで、いま、組織が必要としている目的を探求追求する。
そして、組織が行こうとしている方向を感じとり、共有し合って、向かおうとしている目的を見出していく。
進化する目的と、個人の心の深い部分が、共鳴し合うということですね。
感覚を大切にしながら共鳴する中で、目的が進化し、組織という生命体の新しい可能性が広がるのかもしれません。
こういうことを目指していくのが、ティール組織であり、進化する目的であるのかなと思っています。
【まとめ】ティール組織の存在目的は進化していく
組織の声に耳を傾けることで、目的はその都度、進化していきます。
もっと大きな目的から、最初の目的を見つけたときには気づかなかった小さな目的まで。
ティール組織は、一人ひとりが目的を感じとり、行動し、探求することで、思いもよらないないような、でも、もっと素晴らしい方向を見出していく。
そんな可能性を秘めています。
ティール組織では、目的が変化することは自然なことなのです。
これが「進化する目的」という考え方です。
さて、次回は「複雑性の高い信頼」についてです。
ティール組織の根底に流れているものについて解説していきますね。
参考書籍
・フレデリック・ラルー著.「[イラスト解説]ティール組織――新しい働き方のスタイル」中埜博,遠藤政樹 訳,羽生田栄一 監訳,技術評論社,2018年11月26日
・フレデリック・ラルー著.「ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」鈴木立哉 訳,嘉村賢州 解説,英治出版,2018年1月