ティール組織

ティール組織(8)ホールネス(全体性)

※この記事は、森野御土日古のライブ配信やインタビューをもとに、ライターが文章を作成しています。

この記事では、ティール組織の「ホールネス(全体性)」について解説していきます。

ホールネスはティール組織が起こした3つのブレイクスルー
セルフマネジメント・ホールネス・存在目的」のうちのひとつです。

ティール組織では、本人の感じてることも含めて「本人全部(ホールネス)でいられるよう」とします。

ではなぜ、ティール組織では本人全部(ホールネス)でいられることを大切にするのでしょうか。

ホールネス(全体性)とは

ティール組織におけるホールネス、つまり全体性のことですが、これは「全体に合わせなさい」という意味ではありません。

自分の中にあるどこか一部を抑圧したり、切り離したりするのではなく、自分の中の全体、そして組織の中の全体を感じ取ろうとすることです。

例えば職場に行くときには

多くのケースであなたは、狭い範囲の専門家としての自己を纏わざるを得ません。

(例:教師、医師、エンジニア、警備員、上司、部下、または、決定権のないただのアルバイト、といった狭い専門家としての仮面)

一般的な組織では、それが普通ですよね。

自分のもうひとつの顔は切り離され、職場の外にあるプライベートな空間に限定されています。

 

しかし、プライベートな空間であっても、家族の中では「母親として振る舞わなきゃ」とまた別の仮面をつけている人も多いものです。

そうなると「自分でいられる場所がない」と思うことさえあるわけですよね。

そして、この男性社会では、ある種の男性的な、強い意志と決意と行動力を持つことが理想とされる傾向があり、自分の中にある疑念や弱さはあまり歓迎されません。

組織に対して「それって大丈夫かな」という思いがあっても、閉じ込めておかなくてはならないわけですね。

仕事では合理性が大切にされ、人間の持っている情緒的であったり直感的な面は放置され、大切に扱われていない。

世界的な経営者が直感の重要性を語っている時代であっても、今日の職場で直感はあまり許容されていないわけで、

もし、直感で「大丈夫かな」と思ったことがあり上司に訴えたとしても、「君の感覚でしょ。根拠は?」と言われてしまうのです。

ところが直感の中に重要なヒントがあることも

もしかすると、直感で感じ取ったことを周りの人に言ってみると

「私もそう思ってた」

と反応する人がたくさんいるかもしれません。

その直感は、たとえ根拠がなかったとしても組織にとって重要な可能性があります。

言いにくいことでも、直感で感じたことを抑え込まずに言ってみる。

意外とそういう言葉の中に、組織にとっての重要なヒントとなるものがあるのかもしれません。

なぜなら、これだけ日本中の会社が似たような経営をしている中で、停滞を感じるなど似たような状態に陥っているのなら

「当たり前」だと思っていることが間違っていて、間違っているとされている直感の中にヒントがある可能性があるからです。

ハイリゲンフェルト

ティール組織では、このように自分の中の何かを置き去りにするのではなくて、感じていることを大切にして本人全部(ホールネス)でいられるように努めています。

『ティール組織』から、ドイツにあるハイリゲンフェルトの例をご紹介します。

 

ハイリゲンフェルト社は、1990年に設立された、心療内科とリハビリテーションといった心身症治療を専門とするヘルスケア企業です。

2022年現在、8つの診療所と950名を越える従業員で構成されています。

ハイリゲンフェルトの研修では、一人ひとりが自分でいられるような安全な空間と、そこでみんなが発言できるワークショップの場を設けています。

そこは全従業員のための、振り返りと学びの場となっています。

そこで、ある時スタッフの1人がこう言いました。

「自宅でもここと同じことができたらいいなあ」

・フレデリック・ラルー著.「ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」鈴木立哉 訳,嘉村賢州 解説,英治出版,2018年1月

これはすごい言葉ですよね。

このスタッフは、会社の方が家より自分らしく居られるというのです。

このようなレベルの会社が世界には存在していて、その会社は、ティール組織のうちのひとつなのです。

ホールネス(全体性)はティール組織を支える土台

ティール組織ではなぜ、ホールネスが重要視されているのでしょうか。

ホールネスが他の2つのブレイクスルーを支えているからです。

他の2つのブレイクスルーとは

  • セルフマネジメント
  • 存在目的(進化する目的) です。

例えば、ティール組織のセルフマネジメントは助言プロセスによって成り立っています。

助言プロセスについて、くわしくはこちら

助言プロセスでは、何かを決定するときに、1人の人がさまざまな人に助言をもらいながら考え抜いて、組織の何かについて決めていきます。

そして、考え抜く際に、「感じ取る」ことを大切にします。

「あれ、なんか私こう感じているな」ということをちゃんと感じるんです。

違和感や直感がヒントになり、誰も想像していなかった結論にたどり着く。

そうしなければ、今まで、解決しなかったさまざまな問題を解決することはできません。

もしくは、進化する目的、つまり組織の目的がどんどん進化しているときに

「なんか全体はこっちに行こうとしてるな」

ということをちゃんと感じ取って、それをもとに結論を出していったりとか。

助言プロセスを進める過程で、ちゃんと「私の感じている全部」を感じ取ろうとしても、自分の中で何かを抑圧している部分があればその部分は感じ取れません。

そこで、結論がゆがんでしまう可能性があるんです。

誰かからもらった助言の、その奥にある感覚も感じ取ることができません。

だからこそ、助言プロセスの前提として本人全部(ホールネス)でいることが大切なのです。

 

ティール組織は、ひとつの生命体のような組織です。

その生命プロセスを上手く回すためには、自分が今まで抑圧してきた、いろいろな部分を解放して、今、自分が所属している生命体の全体は何を感じているのか、感じ取る必要があります。

ホールネスは、セルフマネジメント、そして進化する目的を支えているんですね。

このホールネス(全体性)がないままで助言プロセスを進めようとしたり、目的を進化させようとしても、本質的な解決は望めないでしょう。

お互いに話せないことがあるのでは、本質的な深い話し合いはできないし、本質的な決定はできません。

これが、ティール組織のホールネスなんだと考えています。

次回も、ティール組織を別の側面から解説していきますね。

 

・フレデリック・ラルー著.「ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」鈴木立哉 訳,嘉村賢州 解説,英治出版,2018年1月