ティール組織

ティール組織(2):3つのブレイクスルー

※この記事は、森野御土日古のライブ配信やインタビューをもとに、ライターが文章を作成しています。

ティール組織は、新しい組織のカタチとして、いま世界中で注目を集めています。

一人ひとりを大切にしながらも、さまざまな業界において圧倒的な成果をあげているティール組織。

この記事では、ティール組織が生み出した「3つのブレイクスルー」について解説していきます。

これまでの組織における進化の過程

ティール組織についての理解をより深めるために、まずは今までの組織のカタチをもう1度振り返ってみましょう。

これまでの歴史上、いろいろな組織が生まれてきましたね。

例えば、レッド(衝動型)と呼ばれている、強い力をもつ人が、弱い人を従わせるような組織です。

ここから、歴史の中で組織は進化していきます。

次に生まれたのは、アンバー(順応型)と呼ばれる、ピラミッド型の組織です。

宗教や政府組織がアンバーの典型例ですね。

人々は、何かの教義を信じたり、ルールを信じたりしています。

上下の階層構造をつくることで、組織がまとまっていきます。

今の私たちからすると、少し息苦しい組織に見えるかもしれません。

しかし、レッド型組織のような、暴力によって支配され、誰かに媚を売らないと生きていけないような世界観と比べるとどうでしょうか。

この宗教的な組織のほうが、いくらか「安心して生きていける」と思うでしょう。

その後、オレンジ(達成型) と呼ばれる、機械的な世界観を持った組織が生まれました。

今も、多くの企業はこの組織形態です。

ピラミッド型の組織よりも、生産性が高く、たくさんのイノベーション(革新主義)を起こして世界中にその組織を広げていきました。

拡大する力が強い組織と言えるでしょう。

そして近年では、平等主義のグリーン(多元型)の組織が生まれています。

各段階で「組織」というものは、新しいブレイクスルー(突破口)を生み出し、新たな組織を形づくっています。

例えば、暴力的な世界観から、順応型(伝統型とも言われる)の組織が生まれた段階では、安定した組織体系が形づくられました。

肩書きや指揮命令系統に従うことで、安定して組織が大きくなれるようになったのです。

そして、達成型と言われている組織では、革新主義というブレイクスルーを起こしました。

オレンジの世界観では、実力主義によって人々は評価されます。

組織の中で地位を上っていくチャンスは誰にでもある、という変化をもたらしたのです。

ティール組織が生み出す3つのブレイクスルー

これまでの歴史をみると、組織が進化する段階では、必ず何かのブレイクスルー(突破口)を生み出しています。

このティールと呼ばれる進化型の組織は、何のブレイクスルーを生み出すのでしょうか。

ティール組織は、

  • セルフマネジメント(自主経営)
  • 全体性(ホールネス)
  • 存在目的(進化する目的)

という、3つのブレイクスルーを生み出しました。

セルフマネジメント(自主経営)│ティール組織3つのブレイクスルー①

ティール組織が生み出す3つのブレイクスルー、1つ目はセルフマネジメントです。

ティール組織では、一人一人が自立的に自分をマネージメントします。

そのために、全社的決定や紛争の解決・仕事の調節・他部署への要求など、今までマネージメント層や経営層しか行っていなかったことを一人一人が行える権利を持つようになります。

たとえ1000名を超えるような大きな組織であっても、上下の階層構造や段階を前提にして運営されていません。

コンセンサス(合意)という「全員一致した意見だよね」とか「何となく一致してるよね」ということで組織が動くのでもありません。

一人一人が思考し、責任を持って決める中で、仲間と調和しながら組織が動くようなシステムをつくり出しました。

トップダウンでなくても、一人ひとりが自分で考えて、自分自身のことをマネジメントしている。
なのに上手く組織がまとまっていくという形を見つけ出したんですね。

もちろん、セルフマネジメント(自主経営)は簡単ではありません。
成立させるさまざまな工夫があるので、それは別途説明していきたいと思っています。

ホールネス(全体性)│ティール組織3つのブレイクスルー②

ティール組織が生み出す3つのブレイクスルー、2つ目は「ホールネス」です。

人々は、職場に行くときには仮面をつけて、ある狭い範囲の専門家として振る舞います。
(上司、部下、教師、警備員、エンジニア、医師、または、決定権のないただのアルバイト、という仮面など)

そのことによって、自分を何かから守ろうとし、自分の意見を人に聞いてもらおうとするんですね。

「私は専門家だから」「この知識については私のほうが詳しい」と、人に言うことを聞かせようともします。

そして、その専門家という仮面を被っているから、自分は安全だとも思い込む。
(例:「専門家としての倫理に従っているだけだから、責められるいわれはない!」など)

今までの組織では、「感情的な部分は置いておきなさい」と言われてしまい、感じていることや直感などは聞いてもらえなかったかもしれません。

そうではなくて、ティール組織では、本人の感じてることも含めて、本人全部(ホールネス)でいられるようとします。

仮面を被ってどこかを抑圧することがないように、そのままの自分でいられるように、そして、そのままの自分で感じていることを大切にできるように。

そのためにティール組織では、心理的な安全が感じられる空間をつくり出そうとします。

しかしそれは、あなたの思っていることは全部無条件で、思う通りにみんなしてくれる、というような安全ではありません。
傷つくことはまったくないという心理的安全でもありません。

何らかの前提をちゃんと決めて、その前提をお互いに守ることによって、みんなが安心できる状況を作り出すということです。

例えば、

  • みんなそれぞれに正しさがあるということを認めましょう
  • お互いの必要性を理解し合いましょう

という前提をもつ組織があるとします。

これがあれば、正しさを駆使して、自分の正当性を確保し、強引に自分が必要としていることを認めさせなければ部署を守れない!という感覚が消えていきます。

率直に必要なことを伝えることで、お互いの必要性を満たすことができるようになるからです。

みんなが、ある前提を守っているから、安心した空間がつくられるのですね。

また、同時に、暴力的ではないコミュニケーション法を身につけることで心理的安全を生み出そうともします。

このような心理的安全を大切にしながら、ホールネス、つまり全体性というものを生み出していきます。

組織全体もひとつの生命体で、その中で生きている、ある種の細胞が自分でもある。

そのため、組織という1つの生命の全体性ということも、ティール組織では大切にするのです。

存在目的(進化する目的)│ティール組織3つのブレイクスルー③

そして最後、3つ目が「存在目的」です。

ティール組織は、組織自体が、生命と方向性を持っています。

現在の一般的な企業のような機械的な組織では、目標や達成基準、そこに向かうまでの戦略を明確に決めることで組織を運営しています。

上司から部下に目標や予算を押しつけるといった、どこか心を置き去りにした、一方通行のコミュニケーションです。

そうではなくて、ティール組織では、一人ひとりが「なんだかこの組織は、こっちに向かおうとしてるな」ということを感じとっています。

そして、その感じとったことを仲間と共有し合うことで「あ、そうか」と新しい発見があったり「あ、そんな感じなんだ」と、お互いの感覚や意思を共有していきます。

その過程で、組織全体の存在の目的や、進みたい方向を感じとれるようにしていくのです。

組織が将来どういう風になりたいのか。

この組織はどのような目的を達成したいのか。

みんなで心の声に耳を傾けたり、感じとったりしていきます。

それを理解し合う場に、みんなで参加し、話し合い、共有し合っていく。

一人ひとりが、組織は今どこに向かって進もうとしてるのかを知ろうとする。

ティール組織では、そうやって、みんなで組織の存在目的を見つけていくのです。

ティール組織で生み出された新しいブレイクスルー

ティール組織は、今までの組織にはない新しいブレイクスルーを生み出しました。

それが、セルフマネジメント(自主経営)・ホールネス(全体性)・存在目的(進化する目的)です。

一人ひとりの意思や考え、心の声を大切にしてティール組織は形づくられていきます。

ティール組織においては、私たち一人ひとりが組織という生命体の一部なんですね。

 

次回は、この3つのブレイクスルーのうちの1つ「存在目的(進化する目的)」について、より詳しく解説していきます。

 

参考書籍
・フレデリック・ラルー著.「[イラスト解説]ティール組織――新しい働き方のスタイル」中埜博,遠藤政樹 訳,羽生田栄一 監訳,技術評論社,2018年11月26日