※この記事は、森野御土日古のライブ配信やインタビューをもとに、ライターが文章を作成しています。
新しい組織のカタチとして注目されているティール組織。
ティール組織は、さまざまな分野や国・地域で先駆的と言われる企業組織の研究を基に、フレデリック・ラルーが考察した新しい働き方のスタイルです。
この記事では、フレデリック・ラルー著「イラスト解説 ティール組織 新しい働き方のスタイル」を参考に解説していきます。
ティール組織の現在
ティール組織は、新しい組織のカタチとして、いま世界中で広がりを見せています。
多くの国や地域で、同時多発的に現れ始めているのが特徴的です。
ラルーが研究したこの組織は、お互いに、とてもよく似た共通要素をもっています。
これは、今までの組織のカタチとは異なる、新しい組織と言えるでしょう。
今までの組織の世界観とは
ティール組織が現れる前、私たちはどのような世界観をもつ組織の中にいたのでしょうか。
ティール組織のしくみを理解するために、まずは、他にどのような組織のカタチがあるのか見ていきましょう。
まず最初に現れたのが「レッド(衝動型)」と呼ばれる組織です。
ボスが支配する、トップダウンのような組織のカタチです。
レッドは、動物的な本能に基づき、「力」を通して世界を見ています。
例えば、野生の狼の群れのようなイメージですね。

そして、次に現れてきたのが「アンバー(順応型)」と呼ばれる組織です。
アンバーの世界観では、ピラミッド型の、肩書きや指揮命令系統に従い行動します。
正しいか正しくないか「ルール」を通して世界を見ています。
政府組織・宗教・学校など、現代でもアンバーの世界観は多く見られます。

科学と産業革命がもたらした「オレンジ(達成型)」と呼ばれる組織は、完全な物質主義の世界観をもっています。
人間を機械や、組織の歯車の一部のように捉えて、生産性を追求します。
より速く、より多くのものを求めていくのです。
利益を追求する姿勢は、一部の上場企業や銀行などをみれば明らかでしょう。

オレンジの組織がもたらす問題点に気づいた人々は、「グリーン(多元型)」と呼ばれる組織をつくっていきました。
これは、まるで家族のような世界観をもった組織です。
みんなが対等であることに価値を置いています。
しかし、このみんなが対等で平等主義のグリーンでも、組織運営において矛盾と葛藤を抱えることになるのです。

これらの、今まで生まれてきた組織の世界観とは、
まったく異なる、新しい組織のカタチがティール(進化型)組織です。
新しい組織形態「ティール組織」のしくみとは
今、世界に広がりつつある新しい組織の世界観(パラダイム)である、ティール組織。

ティール(進化型)組織は、一体どんなしくみを持っているのでしょうか。
新しい組織のカタチでは、人々は縦でもなく、横だけでもなく、より複雑に、立体的な繋がりをもっています。
- 相互に必要なつながりを持っているような組織であったり
- 細胞が相互に協力しあうような組織であったり
(神経細胞を繋ぎ複雑に絡み合うシナプスのようなイメージ) - 小さな自主経営のチームが集まり運営しているような組織だったり…

さまざまな形態がありますが、
共通点は、組織を「1つの生命体」というイメージで捉えていることです。
そして、その生命体の中で、一人ひとりが考えて一人ひとりが決断していく
それによって組織が創られていきます。
ティール組織には大切な要素があります
ティール組織における大切な要素の1つにセルフマネジメントがあります。
一人ひとりが自分で自分をマネジメントする、つまり自己管理することは大切な要素の1つです。
そして、一人ひとりが、自分の感じていることを大切にすること。
仮面をつけて組織にいるのではなくて、ありのままの自然な自分として組織の中にいること。
その中で、今、組織全体は「こっちに向かおうとしているんじゃないかな」と感じること。
ときには、みんなで話し合いながら「これをやるべきだ」と思うことは、
一人ひとりが自分で考えて、一人ひとりが決断して、行動して組織ができあがっていきます。
組織全体の目的も、その都度、その時の状況に合わせて、進化すると言われています。
ティール組織は、一人ひとりが感じている目的に向かって進んでいく中で、組織全体の目的も進化しながら成熟していくのです。
良い相互作用で圧倒的な成果を生み出す
ティール組織では、一人ひとりの人生の目的を置き去りにせず、
ちゃんと心で感じること、ちゃんと考えること
そして、各々の意思や目的、考え方、価値観を大切にしています。
それでありながら、組織としてバラバラにならず、むしろ大きな力を出しています。
実際にティール組織は、工場や医療機関、服飾の業界など、様々な業界において
収益的な面も含めて、圧倒的な成果を出しています。
つまり、一人ひとりを大切にするために
組織がバラバラになったり、利益を損なってしまう組織ではなく
一人ひとりが感じること、考えること、そして自分の価値観を大切にすることで
良い相互作用を起こしていくことで、より大きな利益を生み出しているのです。
目的に向かって柔軟に進んでいく
しかし、利益は組織の目的に向かうための、1つの手段でしかないとも考えています。
「利益」が目的ではないということですね。
組織全体が、目的としている方向に向かっていく過程で、その都度、みんなで感覚を感じ取りながら進んでいく。
必要なら言語化して「あぁこっちだね」という風に、みんなで模索していきます。
組織の大切な一部である、一人ひとりの知性(=集団の知性)を上手に引き出して、次のステージ、次のステージへと進んでいくのです。
経営者や経営陣、一人のリーダーの出した目的を追求する組織ではありません。
「組織」という1つの生命体自体が、目的をもっていると考えます。
そして、その組織自体の目的と、自分自身の目的が共鳴するのかを見極めていきます。
それを知るために、ティール組織では、心の声を大切にしようとします。
自分の心の声を感じとって、必要なら計画を立てたり、予測を立てたりしていきます。
頭で予想してコントロールするのではなく、柔軟に、今の自分に必要な分だけということですね。
組織を「1つの生命体」として捉える新しい組織のカタチ
ティール組織は、組織自体を「1つの生命体」というイメージで捉える、新しい組織の世界観です。
規制の厳しい電力業界や、工場や建設業などのブルーカラーの企業でも、看護師さんの組織や、医療業界、コンサルティングの企業でも、世界中でこのティール組織は成り立っています。
最大で、4万人規模に上る企業もあります。
面白いことに、利益性がかなり低い業界でも、ティール組織は生まれているのです。
むしろ、成熟して、競争が激しくなり、利益性が低くなった業界だからこそ、生まれてきているとさえ言えるのかもしれません。
これが、「ティール組織」です。
次回からは「大切な3つのブレイクスルー」など、ティール組織についてより詳しく解説していきます。
参考書籍
・フレデリック・ラルー著.「[イラスト解説]ティール組織――新しい働き方のスタイル」中埜博,遠藤政樹 訳,羽生田栄一 監訳,技術評論社,2018年11月26日